今年公開になった「剣岳」同様に真面目に作られた作品で悪く言うのが気が引ける超大作作品だ。剣岳は元々ドラマ性が希薄なものをそのまま作り画面と役者の演技で作品に仕立て上げた作品であった。「沈まぬ太陽」は原作をどう簡略化して画面と役者の演技で作品に仕立てた作品になっている。多くの人がCGがしょぼいと言っているが,確かにそうだがそれはあまり問題ではなく,カメラの構図が少々単純で演技者の演技に頼り切った感はある。物語りも粛々と進んでいくため気の短い人にはいらいらさせると思う。映画なら画面に集中できるのでテレビ向きの演出ではない事は間違いない。
物語は日本の高度成長期の組合闘争から昭和の終わりまでを舞台にしている。今の若い人に言わせれば,主人公の恩地はそんなに理不尽な人事をされて何で会社を辞めないのかという疑問が湧くかもしれないが,それこそその時代のそハッスル父さんの“矜持”だと思う。時代劇を見てちょんまげ格好悪いと批判しているのと変わりが無い。(確かに主人公は東大法学部卒の設定だから有り余るほど矜持は持ち合わせているだろう)
以前のナイロビ勤務と物語が終る時のナイロビ勤務では主人公の顔つきがまるで違う。何よりも主人公が救われた状況になったかを表している。
働きに疲れたお父さんにはお勧めの映画だ。